学際的研究プロジェクト「カーボンニュートラル社会の実現に向けた革新的材料・プロセス研究」
2024年度より龍谷大学 学際的研究プロジェクトに採択された「カーボンニュートラル社会の実現に向けた革新的材料・プロセス研究」にかかる研究を推進していきます。
研究概要
・研究テーマ:「カーボンニュートラル社会の実現に向けた革新的材料・プロセス研究」
“Innovative Materials and Processes Researches for the Realization of the Carbon-Neutral Society”
・代表者:河内 岳大教授(先端理工学部)
・概要:
本センターが展開してきた「環境に配慮した材料科学研究」をさらに推し進め、カーボンニュートラル社会の実現を強く指向し、研究展開を①バイオミメティクス、②低エネルギー駆動、③未利用資源活用、④革新的リサイクルの4つの化石燃料消費削減に直結したテーマに集約した上で、企業や自治体との協同のもと、成果を事業化などの社会実装として結実させます。
研究の目的
産業革命以降、化石燃料をはじめとしたエネルギー資源の爆発的な利用により、人類の生活圏は経済発展と共に急速に拡大しました。特に20世紀の100年間は大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会であり、そこでは自然環境の回復を省みないかたちで燃料・原材料を採取・加工し、我々の生活を便利にする工業製品を次々に製造し、そして不要となった製品を自然環境中へ大量に廃棄しています。しかしながら昨今、自然環境への負荷は既にそのレジリエンスを越えていることは自明となり、人類社会の継続的発展に対して多くの警鐘が鳴らされるに至っています。
2023年3月に公開されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次統合報告書では、重篤な損害をもたらす気候変動の要因が人間活動であることは「疑う余地がない」と断定され、温室効果ガス低減に向けた「低(脱)炭素」、「カーボンニュートラル」をキーワードとする新しい社会の構築が人類共通の課題として明示されました。
本学においても、仏教系の高等教育機関として「龍谷大学 カーボンニュートラル宣言」が2022年に掲げられました。その中では「人文・社会科学から自然科学まで幅広い知見を有する大学として、カーボンニュートラルに係る研究成果を社会実装していく」こと、ならびに「教育活動を通じて、カーボンニュートラルの担い手となる次代の要請に応えた人材を育成する」ことが発出されています。
このような背景のもと、本プロジェクトでは自然科学分野の視点より、次に示す4つのテーマを柱として、カーボンニュートラルの実現につながる「新材料開発」、「新プロセスの開発」を推進します。
①バイオミメティクス:様々な分子やその会合体から成る生体の階層構造・生命システムなどを模倣することで、触媒、刺激応答、分子認識、センシングなどの機能を発現する材料を開発する。
②低エネルギー駆動:エネルギーを過剰に投入するのではなく、合成分子の自己組織化や、温和な刺激で構造変化する分子を用いたエネルギー変換、水中で進行する平衡反応を駆使した超薄膜の作製、セラミックスの室温合成など、低エネルギー密度でも駆動するシステムを基本とした材料研究を実施する。
③未利用資源活用:農作廃棄物を原料とした耐熱性樹脂や、未利用光である近赤外光に応答する材料など、現行技術では利用されていない資源・エネルギーを活用可能な材料・プロセスを開発する。
④革新的リサイクル:有価金属回収済み廃液やメッキ廃液といった金属元素を僅かに含む希薄水溶液からの選択的な貴金属回収技術の開発、生分解性材料のコンポスト化における地中分解プロセスの解明など、省エネルギーリサイクルプロセスの開発を行う。