内田欣吾研究員が光化学討論会でSpecial Lectureship Awardを受賞【革新的材料・プロセス研究センター】
2024.09.20
内田欣吾研究員(本学先端理工学部・教授)は、有機合成化学の力を駆使し、光照射によって有機結晶の表面形状が可逆的に変化する現象を発見し、これを利用して、ハスの葉やバラの花びらなど、特異な表面構造の特性の人工的再現に成功して以来、植物だけでなくシロアリやゾウリムシなど、多様な生体組織のメカニズムを解明し、光応答性結晶を用いた人工的なシステムに変換する研究に取り組んでおり、海外からも注目を集めています。 今回、九州大学伊都キャンパスで開催された2024年光化学討論会において、Special Lectureship Awardを受賞しました。
内田研究員は「Novel Macroscopic Applications of Molecular Photoswitches: From Photoinduced Surface Functions to Biological Cell Death Induction」と題し、これまでの光照射により様々なバイオミメティック表面を作成した研究に加え、ジアリールエテン(DAE)結晶の薄膜上で光を照射すると細胞死が確認されたことを報告。この細胞死には2つのケースがあり、1つは紫外線照射によりDAEからSO2ガスが発生するためであること、もう1つはDAE閉環体のDNA塩基対間へのインターカレーションとそれに続く紫外光(青色)436 nmの光照射によりDNA二本鎖切断によって引き起こされるアポトーシス(1)であることを説明しました。
この細胞死を引き起こす方法については、まだ生体内での実験を継続していく必要があるものの、血液中の溶存酸素濃度とは無関係のため、酸素濃度の低いがんの組織細胞死を効果的に誘導できる可能性があり、今後、光線力学療法システム(2)としての応用が期待されます。
【参考論文】 PDF
https://www.hyomen.org/wp-content/uploads/papers/vol7_no4/uchida/uchida_126.pdf
問合せ先
龍谷大学先端理工学部 内田研究室
uchida@rins.ryukoku.ac.jp
龍谷大学先端理工学部応用化学課程 内田研究室 Uchida Laboratory Index (ryukoku.ac.jp)
龍谷大学 人間科学研究センター
soken@ad.ryukoku.ac.jp
【用語解説】
(1) アポトーシス(apoptosis)とは、多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた細胞死のこと。
(2)光線力学的治療法(photodynamic therapy: PDT)とは、がんに集積性を示す光感受性物質とレーザー光照射による光化学反応を利用した局所的治療法。PDTは従来のレーザーによる光凝固や蒸散などの物理的破壊作用とは異なり、低いエネルギーで選択的にがん病巣を治療可能であり、正常組織への障害が非常に少ない低侵襲な治療法とされる。